IT大国ロシア

ロシアのITベンチャー、ロシアの大学生、ロシアのあれこれ、日本ではアクセスしにくい情報やニュースを発信します。

ロシア最大のSNS、VKの創業者が開発!収益化しないメッセンジャーアプリ!


一風変わったメッセンジャーアプリを見つけたので紹介します。

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ロシアで最も有名なソーシャルネットワーク VKontakte の創業者である、パーベル・ドュロフ氏(29)が Digital Fortress という会社をアメリカに設立し、Telegram というメッセンジャーを公開しています。



Telegram とは?
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セキュリティに最大の強みを置くメッセンジャーアプリで、電話番号を知っている人に対して、写真、動画、ファイル(doc,zip,mp3 etc...)
を一瞬で送ることができます。クラウドベースなので、どんな端末からでも送信が可能で、アプリは電話番号に紐づけられているため、ログインやパスワードは必要ありません。また、200人までのグループ作成も可能です。

類似のサービス Whatsappと違う点は、
無料&月額費用なし!広告表示もなし!

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マネタイズは?
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大前提として、このサービスは収益を目的としていません。そのため、広告を配信することもなければ、データを販売することもありません。

もしサービスの存続が危ぶまれるようなら、ユーザーから寄付でも募ります

 とサイトに書かれています。

収益をあげない仕組みである以上、政府から睨まれることもないし、仮に何か言われても、サーバー上にはデータが残ってないので、どうしようもありません。

とも公言しており、とにかく人畜無害をアピールしています。

さらに、APIプロトコル をすべて公開しているので、合わせて、最も有益なバグを指摘した人に 2000万円の賞金を提供するセキュリティコンテストを開催しています。スピードやセキュリティの質はもちろん、オープンで健全なメッセンジャーとして知名度を高めようとしています。


セキュリティは?
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同社が自信を誇っているセキュリティですが、アプリ上でのやりとりは、終端間暗号化(End-to-End Encryption, E2EE)によって保護されているため、企業サーバーを経由しません。つまり、企業側でデータの解読などはできないということを意味します。ちなみに、Apple の Facetimeも同じ仕組みに基づいています。複数のデータセンター(ロンドン、サンフランシスコ、シンガポールヘルシンキ)を所有するため、速くて、安全です。

さらに、パーベルの兄であり、VKontakte の技術責任者でもあるニコライ・ドュロフ*1が自ら開発した MTプロトコルに基づいています。詳細はこちら


今後の計画は?
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2013年の8月にiOSで、10月にAndoroidで公開しました。AppAnnie によると、中東を中心に数百万ダウンロードされてはいますが、主要国ではイマイチです。

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このアプリをリリースした目的は、ユーザーから確固たる信頼を集めることであり、次のステージへの第一歩としています。今後、音声通話アプリの開発などを検討中ですが、Telegram との関係性はハッキリしていません。

現時点では、目論見が成功しているとは言えなさそうですが、ドュロフ兄弟にはVKを流行らせた実績があります。VK の DAU(Daily Active User) は5000万人です。ロシアのインターネット人口は 6000万人であることを加味すれば、圧倒的な知名度といえます。

今後、どのような展開を見せるのか楽しみです!


出典:
Forbes.ru

*1:サンクトペテルブルク大学とドイツのボン大学、2つの大学で博士号(数学)を取得

【随時更新】 ロシアのアドテク、カオスマップ2013!


日本では ほとんど知られていない、ロシアのアドテクについて調べました。

アドテクといえば、カオスマップがすべてを物語ると思ったので、各資料を参考に作ってみました!とはいえ、僕自身があまりに未熟なため、まだ細かい区分はできていません。わかり次第、更新させていただきます。

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参照:cossa.ru , ADFOX資料


アドテクの全体像については、

同期とアドテク勉強会を開いたので資料を公開するよ - noriaki blog はてな出張所

が一番わかりやすかったです。(お世話になりました)


RTB市場
eMarketer によると、2015年までにロシアのRTB市場は720億円になると予想され、これは、ロシアのインターネット広告4000億円の18% (2015年)にあたります。とはいえ、2013年はまだ5%くらい(約100億円)のようですが...。

ちなみに、マイクロアド によると、2013年の日本のRTB市場は390億円で、2017年に1000億円を超えると予想されています。


ネット広告市場
Russian Association of Communication Agencies (AKAR)によると、 2012年のロシアのネット広告市場は約1700億円で、枠売り広告が 540億円、運用型広告*1が 1170億円という内訳です。(2011年から12年にかけて運用型広告の市場は45%増)

ちなみに「2012年日本の広告費(電通)」によると、日本のネット広告市場は約8700億円で、枠売り広告が3300億円、運用型は3400億円、という内訳です。

グラフにするとこんな感じです。

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モバイル広告市場
ロシアのモバイル広告の市場ですが、2012年は114億円、2015年には404億円に跳ね上がり、2020年までには1000億円を超えると予想されています*2。アドリクエスト、インプレッション数の "伸び率" は世界6位に位置します。ちなみに、日本は2012年で 1300億円の市場がありますが、伸び率は世界15位です。


もし、間違い等お気づきになられましたら、ご連絡いただけると幸いです。

*1:検索連動型広告/AdExchage/DSP/SSP 等含む

*2:J'son & Partners Consulting は、2012年に60億円、2015年に216億円と評価していますが、業界の盛り上がり(投資状況)をとると、過小評価だと思います。

僕が思う、ロシアで流行りそうなサービス【~クックパッド~】

 

特に数字などの根拠はありませんが、クックパッド はロシアでも流行るんじゃないかなと思います。最近、食生活が乱れ、おいしいものを食べたいな~!と思ってたところ、ふと閃いたので書いてみます。笑
 

理由その1:ロシア料理の多様性--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
ロシア・ウクライナ料理といえば「ボルシチ」が有名ですが、ボルシチはお店によって味が全然違います。ファーストフード店で食べるボルシチ、ちょっといいお店で食べるボルシチ、招待されて家で食べるボルシチ、スープの濃さもまったく違います。

さらに、アクローシュカというスープがあります。夏場の冷製スープとして食べられているのですが、ポテトサラダのような具に①レモンジュース②クバス*1③ケフィル*2を入れるケースがあります。

このように、”家庭の味" が存在し、調理方法は様々です。


理由その2:自炊の習慣
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ロシアは物価が高い国です。例えば、モスクワのスターバックスでは、カフェラテのショートが 190ルーブル(570)、ファーストフードのクレープでも 100ルーブル(300円~)もします。その割に、平均賃金は低く「私の給料」というサイトによると、モスクワの平均賃金で 18万円くらい、ロシアの平均賃金は 6万円といわれています。(中間層が増えているとはいえ、いまだ激しい二極化なんだと思います)

とすると、外食はたまにしかできず、基本は自炊です。

さらに、ダーチャという山小屋・小別荘(都心部から車で2~3時間)を持っている家庭が多いです。ここには自家菜園があり、友人を招いて、採れたての野菜で料理やBBQをしたり、というのも珍しくありません。


理由その3:SNSの使い方
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日本人は Facebookにおいて、リア充アピールをしたり、意識高い発言、ニュース記事の批判、イベントの宣伝などをしたりします。ロシアには VK というロシア版 Facebook があるのですが、ここでは、3行以上のことをつぶやく人は少ないです。

写真に1~2行のコメントを添えて投稿するケースがほとんどです。長文を打たない、画像ベース、ということからもクックパッドに親しみやすい気がします。

若い層はもちろん、上の世代(50歳~)も電子書籍スマホをよく使います。電車の中で、60歳くらいのおばあちゃんがスマホでライトゲームをしているのは新鮮でした。


クックパッドの戦略
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クックパッドの IR資料によると「語圏で攻める」という風に打ち出しています。その点、ロシア語を母語とする人は約1.5億人で、マーケットサイズとしては小さくはないと思います。(とはいえ、ロシアは人口減少を迎えています。旧ソ連圏からの移民を受け入れているため、データ上では横ばいor微増ですが...)
 
スマホユーザーに関して、出典によって数値がバラバラなのですが、2013年のスマホ普及率は約30%程度です。


競合
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Foodclub.ru というアプリはいろんなレシピを提供しているモバイルアプリです。現在はキャンペーン期間のため315円ですが、本来は525円の有料アプリです。さらに、ユーザーがレシピを投稿するのではなく、シェフがきちんとしたレシピを投稿する、従来のレシピサイトです。(ランキングで質の高いレシピを集める)

ユーザー数はわかりませんが、クックパッドのFacebookページは約 10,000 いいね!に対し、Foodclubの VKページには約 12,000 いいね!があります。ちなみに、Foodclubの Facebookページは約 8,000 いいね!です。



以上、競合以外は特に調べず、思ったことを書いてみました。

この記事をクックパッドの関係者が読んで、興味を持っていただけたのであれば、是非ご連絡ください!微力ながらもお手伝いできることがあればさせていただきます!

 

*1:黒パンを発酵させたもの

*2:牛乳とヨーグルトの中間

2億円以上を調達!ロシア教育系スタートアップ5選+1

 



今日は、暇があれば調べようと思っていた、教育系スタートアップです。


ロシアの人口は、1億4千万人ですが、モスクワに約1000万人、サンクトペテルブルクに約500万人、加えて、100万人を超える都市が10 あります。(合わせても3000万人未満)*1

あと1億人どこに住んでるんだよ?w

国土広いから隣町への通学も大変そうだし、冬は寒いし、暗いし、ロシアではオンライン教育は必然なのでは?と思っていました。ちなみに、Rusbaseの調べでは、2014年から2015年にかけて、ロシアの教育ビジネスは50%の成長率が予想されています。


会社名:dnevnik.ru
創業:2009年
調達額:12億円
株主:Runa Capital
概要:小学生、教師、保護者向けSNS

ロシア、ウクライナに展開し、 3万校への導入を果たしており、登録は無料で、500万人の児童、63万人の教師、270万人の保護者が登録しています。電子教材はじめ、授業の時間割、学級通信、行事連絡などすべてサイト上でのやりとりが可能です。また現在は、進学にまつわる情報(入試など)を蓄積しているようす。

会社名:LinguaLeo
創業:2009年
調達額:3億円
株主:Runa Capital
概要:オンライン英語学習

数か月で3000語~8000語の新しい単語を覚えるようなカリキュラムがあり、フリーミアムで、3か月で2400円、1年で7200円というプラン(中・上級者)が用意されています。CIS圏を中心に600万人が利用。ロシアで有名なビジネスコンテスト(2011年)で受賞するなど、多くの注目を集めています。
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会社名:UNIWEB
創業:2010年
調達額:2億円
株主:個人投資家
概要:ロシア語圏のオンライン大学

授業は有料(平均3万円)のものが多く、修了後は大学から証明証が発行されます。講義は映像講義で、通常の大学のように「同じ時間に、同じメンバー」で受けます。講義だけではなく、学生同士のディスカッションや課題・ケースなどインタラクティブな設計です。現在は 9の大学と提携しており、多くがMBAに関する授業です。

会社名:ChekiO
創業:2009年 (サービス開始は2011年)
調達額:2億円
株主:Vegas Tech Fund、他多数
概要:オンラインプログラミング学習(中級)

ウクライナ人を中心にした多国籍チーム。コードを書いてパズルを解き、プレイヤー同士でフィードバックさせたり、チームを組んだりさせて、ソーシャル性を高めています。現在はユーザー数を増やすことに焦点を当てており、エンジニアの企業紹介によるマネタイズを検討中。ユーザーは約 2万人で、週の平均プレイ時間は3時間。

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会社名:YaKlass
創業:2007年 (サービス開始は2010年~)
調達額:2億円
株主:Vesna Investment
概要:小学生向けオンライン補助教

無料版は、国語と算数のみ。有料版(月額300円)は、ほかの教科にも登録でき、より詳細な解説にもアクセスできます。各科目で50段階のレベルが設置されており、このサービスを通じ、30%の学習効率UPが期待できるそうです。(自社調べ)



あと、個人的に使ってみたいと思ったサービスを1つ紹介します。

会社名:WeStudy.in
創業:2013年
調達額:3000万円
株主:個人投資家
概要:海外学習アドバイザーのマッチング

創業者のアレクサンドルは、ニューヨークへの留学経験がありますが、カリキュラムや現地の情報は、友人から好評価でした。それに着想を得て、海外留学や研修を希望する学生と、アドバイザー(コーディネーターor 経験者)をマッチングします。紹介料は一律5000円で、応募書類の手配や奨学金の手続きサポートは、追加費用が発生します。


感想
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調べてみると、サービスの完成度やユーザー数において「まだまだ感」が否めませんが、電車の中で小さな子供が iPadで本を読んでたり、ゲームをしているのをみると、流行る土壌はあると思います。電子書籍をとってみても、お年寄りもバリバリ使っているので、デジタルデバイスに対する敷居は結構低いと思います。とはいえ、まだ都市部の人間だけだなあ、というのは強く感じます。

*1:ちなみに、日本では上位10都市に住む人口は約7000万人です

ロシア全土から1600件の応募があるビジネスコンテスト



今日は、政府が支援しているビジネスコンテストを紹介します。

2011年くらいまで、ロシア中でさまざまなビジネスプランコンテストが開催されていましたが、最近どうやら BIT Competition というものに統合されはじめています。以前訪問したインキュベータでも「自前ではコンテストを開催しなくなった」と言っていました。

はじめて情報をみつけた時は、略称に惑わされましたが、まとめると以下の通りです。

主催:Russian Venture Company (RVC) :政府系VC
開催場所:API Moscow:政府系インキュベータ
コンテスト名:BIT Competition
プログラム名:Generation S


コンテスト概要
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2003年から、毎年10月に開催されるロシア最大級のビジネスプランコンテストです。2010年の応募は400件でしたが、2013年には1600件もの応募がありました。部門などは設けられていませんが、大枠は ①IT ②ハイテク ③バイオ に分けられます。(日本のように"社会起業枠"はありません)。


書類選考を通過し、セミファイナルに臨む70チームは、2週間のメンタリングプログラム(GenerationS)を受けることができます。72名のスピーカーによるセッション、90名のメンターとのミーティング、それらを経てファイナリスト15チームが選出されます。その後、最終プレゼンを通じ、賞金1000万円を分配します。ちなみに、2013年は「選びきれなかった」という理由で、特別16チームがファイナリストとしてノミネートされました。

2013年度の受賞チーム4社を紹介します。(見出し数字は便宜上のためであり、順位ではありません)


1) 3D Metal Print
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従来の3Dプリンタでは、十分な強度をもった金属素材を作ることができませんでした。そこで、金属素材を作ることに特化したプリンタを開発し、航空会社などにおいて、自前で部品の調達を可能にします。ナノテクに関する 20の特許を取得し、300本の論文を書く教授や40のロボットを開発する技術者によって構成されるチームです。


2) БиоМикроГели (Bio Micro Gell)
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水と混ざった油を分離させる、バイオゲルを提供しており、水質汚染など環境問題の解決に取り組むNPOです。ウラル大学を卒業後、さまざまなキャリアを歩んだ友人らと共にスタートしました。現在は1時間で1000リットルの水を浄化でき、分離させた油は製品の原料としての再利用が可能とのことです。


3) Appercode
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1つのコードを書けば、iOS, Android, Windows Phone, Windows 8 すべてにおいてコードの複製が可能になり、制作期間を3〜5倍短縮できます。スタートアップ界隈ではとても名を馳せており、マイクロソフトから600万円の賞金とサポートを得ながらリリースしました。海外展開にも力を入れています。


4) Wayray
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以前の記事 ロシアのハイテク・スタートアップ6選 をご覧ください。


出典

エンジニア不足が懸念される今、ロシア政府が打ち出した施策とは!?


こんにちは。最近は外に出るのが億劫になるくらい寒くなりました。

さて、2014年〜2018年にかけて、ロシアでは 35万人のエンジニアが不足すると予測されています。そこで、昨年12月30日に、ロシア政府は「国内のIT産業を強化する」という趣旨で、5ヵ年計画を発表しました。

例えば、コンピュータサイエンスなどを学ぶ学生 15万人に対して、授業料全額免除奨学金を提供することを計画しています。その他にも、面白そうな取り組みがあるのでご紹介します。

イノベーティブ・シティ (カタカナで書くとださい笑)
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施策の中核には、カザンに人口 15万人の画期的な街を創ろうという計画があります。ロシア中から約 6万人の若手エンジニアをこの街に集め、イノベーションが起きやすい環境を人為的に創ろうという計画です。幼稚園や病院施設、ショッピングセンターなどの着工も進めており、研究に専念できるような住みやすい街を設計しています。

カザンは、人口約120万人、モスクワから飛行機で1時間30分のところに位置し、2018年にはW杯が開催される地域です。空港からは、電車やバスを乗り継ぐ必要があるので、アクセスはイマイチです。

政府によるこのような施策は、モスクワにあるスコルコボに続いて、2つ目ですが、いずれも都心部からは少し離れるあたり、シリコンバレースタンフォード大学を意識しているに違いありません。ちなみに、街や建物のデザインは、シンガポールの有名な建設会社 RSP Architects Planners & Engineers というところが担当しています。


ロシア版、慶應SFC
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このシティ構想の中核として Innopolis University というIT教育アントレプレナー教育に特化した大学が新設されます。(2014年9月完成予定)「学問領域だけでなく、不確実な社会でも意思決定ができる人材を輩出する」というコンセプトを掲げており、学士と修士あわせて5000人ということなので、コンセプトや規模感は慶應大学藤沢キャンパス(SFC)とぴったり一致します。

提携校には、ロシアで起業家を多く輩出している Moscow Institute of Physics and Technology に加え、アメリカのカーネギーメロン大学があります。ちなみに、スコルコボの提携校はマサチューセッツ工科大学です。個人的に、最も提携しそうな日本の大学は、会津大学だと思います。あまり知られていませんが、日本において、ロシアとの"技術"交流に最も力を入れている大学です。

現在は、実験段階として大学院生のみを対象とし、一般応募 720人の中から 14人の院生が選ばれました。


政府系VCのバックアップ
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2013年、ロシア国内のIT分野におけるベンチャー投資額は540億円でしたが、5年以内に1200億円まで額を引き上げるとしています。実際、ロシア政府が全額出資する Russian Venture Company (RVC) *1は、各ファンドを通じて、2016年までに国内の総ファンド規模を1兆円まで高めると、あらゆる場で宣言しています。

【参考】
日本国内の総ファンド規模(2012年):約1兆7000億円
日本国内ベンチャー投資(2012年):約1200億円
日本国内のIT分野におけるベンチャー投資額 (2012年):約610億円
出典:2013年度ベンチャーキピタル等投資動向調査結果


感想
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思ったよりもベンチャー企業にお金は流れている気がしますが、ロシアにはシードアクセラレータが少ないので、起業家の層が薄いと感じていました。その点、時間はかかりますが、若手の育成をはじめたのはとてもいいことだと思います。もっと現場の雰囲気を掴みたいので、アポをとれるかわかりませんが、来月この地域を訪問してみます!


もし「ロシアの○○について調べて欲しい」というご要望がございましたら、お気軽にご連絡ください。現地の学生に聞くなり、Q&Aサイトに投稿するなり、あらゆる手段を駆使して、僕なりの回答をさせていただきます。

*1:RVCは約1000億円規模の Fund of Funds で、2013年は144社に約440億円(1社平均3億円)を投資しています

ロシアのベンチャーキャピタル TOP10


フォーブスが発表するロシアの民間ベンチャーキャピタルトップ10を紹介します。ここでは、個人資産やExit 案件をもとにランキングが付けられています。なお、キャピタリストの名前はすべてロシア語の発音です。

1 ユーリ・ミリネール (51)

Юрий Мильнер

ファンド名:Digital Sky Technologies (DST) Global (連絡先だけ)
ファンド規模:3000億円
設立:2005年
ポートフォリオAirbnb, Alibaba, Facebook, Groupon, LinkedIn, Spotify, Twitter, Zynga

ゴールドマンサックスと強い繋がりがあり、IPOをする案件にしか投資しないと言われています。最近では、シリコンバレーの有名インキュベータY Combinator に注目し、TechCrunch記事によると、43件中36件へ1500万円ずつのエンジェル投資を行いました。

また、Mail.ru という事業会社を運営しており、同社は CIS圏を中心に2,4億人のユーザーをかかえるSNS ВКонтакте (国内シェア#1)2億人のユーザーをかかえるSNS  Одноклассник (国内シェア#2)、三井物産も投資している決済端末 QIWI (国内シェア#1) の株を保有しています。


2 ビークタル・レムシャ (43)

Виктор Ремша

ファンド名:Finam
ファンド規模:600億円
設立:2004年
ポートフォリオ:Badoo

ミドルステージの企業に1億〜50億円の投資を行い、3〜5年の期間で、IPOもしくは戦略的パートナーシップを結ばせます。Badooは180カ国(40言語)で2億人が使う新しい出会いを提供するSNSです。他にも30社程度への投資を行い、総出資額は900億円を越えるとされています。


3 レオニード・ボグスラーフスキー (62)

Леонид Богуславский

ファンド名:ru-Net Ventures, RTP Ventures
ファンド規模:500億円
設立:1999年
ポートフォリオ:ivi.ru, Ozon.ru, Fab.com,

主にアメリカのSaaSクラウド分野に投資しており、世界で最も成長が早いECサイト Fab.com にはシリーズDで250億円の投資を行いました。他にも、ロシア国内で2000万人のMAUを誇る動画サイトivi.ru に40億円、ロシア国内最大ECサイトOzon.ruに100億円を投資しています【詳細はこちら


4 アレクサンドル・ドレツキー (58)

Александр Галицкий

ファンド名:Almaz Capital Partners
ファンド規模:200億円
設立:2008年
ポートフォリオ2can, Altergo, Jelastic, Paralles, Qik

ロシアでとても有名なベンチャーキャピタルで、国家ブロジェクト "スコルコボ" のボードメンバーでもあります【詳細はこちら】モバイルからの動画撮影に特化した QikSkypeに150億円で売却しています。OS仮想化ソフトを提供する Paralles は本社はアメリカですが、CEOは9-10位のセルゲイベローゾフが務めるなどロシア勢が活躍しています。


5 ミハイル・チューチケビッチ (43)

Михаил Чучкевич

ファンド名:Bright Capital
ファンド規模:220億円
設立:2004年
ポートフォリオ:Altergo, Deal Angel, Dcotor at Work,

クリーンテックやグリーンケミカル、デジタルの2分野に投資する2つのファンドを運用しています。効率かつ安全なエナジーストレージを提供する Aquion Energy という会社に55億円を投資しました。Dcotor at Work はロシア国内で5人に1人の医師(約20万人)が利用している世界最大級の医師向けSNSです。


6 エドュアルド・シェンデラビッチ (37)

Эдуард Шендерович

ファンド名:Kite Ventures
ファンド規模:60億円
設立:2008年
ポートフォリオ:Altergo, Zeptolab

ファンドを設立する前は、ネットワーク経済について大学で教鞭をとったり、Live journal の親会社であるSUP(本社モスクワ)にて開発戦略を担当していました。Zeptolabは日本では馴染みが薄いですが、世界中で累計4億ダウンロードされている Cut the rope というゲームを提供するロシア最大手ゲーム会社です。


7 ユリービカシモフ (44)

Ульви Касимов

ファンド名:IQ One
ファンド規模:不明
設立:2009年
ポートフォリオIQ Buzz, Megaplan

インターネットとメディアへの投資を行うファンドを運用しています。IQ Buzz はソーシャルメディアを監視し、効果などを管理するサービスです。Megaplan はロシアのSaaS市場25%を占めるリーディングカンパニーで、業務効率化サービス(クラウド会計など)を提供しています。


8 アンドレイ・カザーコフ (27)

Андрей Казаков

ファンド名:Foresight Ventures
ファンド規模:10億円
設立:2011年
ポートフォリオ:Deal Angel

16社の売却実績があるパートナーと2人3脚で、破壊的イノベーションを起こすであろう企業へ平均1000万〜1億円の投資を行います。ホテル価格の比較サイト Deal Angel への投資は5位のBright Capital との共同出資です。また、Deal Angel は OneTwoTrip.ru という旅行サイトへ売却しました。


9-10 マリーナ・トレショーバ (39)

Марина Трещова

ファンド名:Fastlane Ventures
ファンド規模:100億円
設立:2010年
ポートフォリオ:Spato.ru

BtoC (特に、EC, 旅行, SNS, ヘルスケア, 採用)に特化しており、ロシア国内に市場を創出することに焦点を当てています。また、Fast50 という50日でサービスをラウンチさせ、2~3年での売却を狙うプログラムも実施しています。Spato.ru は1.5年で ozon.ru に50億円で売却していました。詳細はこちら


9-10 セルゲイベローゾ (42)

Сергей Белоусов

ファンド名:Runa Capital
ファンド規模:135億円
設立:2010年
ポートフォリオ:Ecwid, LinguaLeo, Nginx

15年以上の付き合いがある起業家たちによって設立され、クラウドホスティングサービス、仮想化、モバイルに特化した投資を行います。同氏は、バックアップ、復元、システムの移行におけるサービスを提供する Acronis のCEOでもあり、売上の約3割は日本市場のため、日本には注目しています。(以前、少しだけお話できました!)



まとめ
ファンドの説明や投資先の説明がごちゃまぜになってしまいましたが、全体的に
BtoBならロシア発でも世界展開を狙えるサービスがちらほらあるようです。BtoCはCIS圏に特化したサービスが多いので、まだ市場は小さく、各分野の#1や#2へ売却を狙う投資が目立ったと思います。


出典:forbes.ru