賛否わかれるロシア版シリコンバレー
さて、今日は、僕がロシアに興味を持ったキッカケでもある、ロシア版シリコンバレーという国家プロジェクト「スコルコボ 」についてお話しします。
スコルコボとは?
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リーマンショック以降、資源価格だけに左右されない強固な産業基盤を築くために、政府主導でベンチャー支援が行われています。その重要プロジェクトが「スコルボ」というモスクワにある経済特区です。(対象は以下5分野)
- 核エネルギー
- 省エネ・エネルギー効率
- 医療
- IT
- 宇宙・通信
2013年7月に訪問
支援内容は?
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公式ホームページによると、入居企業には以下のような特典が与えられます。
・法人税 免除 (20%→0%)
・付加価値税 免除 (18%→0%)
・法人資産税 免除 (2.2%→0%)
・研究開発機器の輸入関税 免除
・社会保険料 減税 (34%→14%)
また、
・会計、法律、などのコンサルティング
・各機関との連携 (大企業や研究機関etc..,)
・外国人向け、労働ビザの手配
・マーケティング支援 (=政府のお墨付き)
さらにまた、
シード:450万円
アーリーステージ:9千万円
ミドルステージ:4億5千万円
レーターステージ:9億円
までの投資を受けることも可能です。(1ルーブル3円換算)
また、企業として参画するためには、
原子力、エネルギー、バイオ、IT、宇宙の分野への投資実績(事業実績)があり、3年間で20億円以上の投資をすること
とされており、Google、Microsoft、IBM、GE、EMC、シーメンス、ノキア、あたりは既に参画しています。2014年からは、宇宙分野での研究開発も活発化するそうなので、日系の大手企業にも参画してほしいです。
日本からスコルコボへ
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12月25日付のニュースリリースよると、京都に本社を置く島津製作所がスコルコボへの参画に調印しました。同社は2011年からロシアへ進出しており、高性能の医療分析機器を販売しています。今回、スコルコボ内にR&Dセンターを設立することになりますが、研究開発だけでなく、ロシア市場での製品販売もよりスムーズになることが期待されています。
近年、日露間では、自動車や資源だけでなく「医療や農業」における恊働も模索していました。(極東地域の話しだと思っていました…)。医療分野に関していえば、2012年より、エーザイも医薬品の販売を開始しているそうです。
実際の評価・評判
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------様々な形で既に1000以上のプロジェクトがスコルコボによる支援を受けています。ス
タートアップを調べていて「面白いな」「ユニークだな」と思う企業は大抵スコルコボの支援を受けており、ちょっと安売りしすぎかな…?とも感じます。しかし、スコルコボ・コミュニティができあがっている証拠でもあり、さらに、IT分野だけでなく、バイオやハイテク分野も盛んなのは評価に値すると思います。
一方で、まだ成功事例を輩出していこともあり「打ち上げ花火」と揶揄され、あまり良いイメージをもたれていないのが現状だと思います。
戦後の日本
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------理系教育が盛んで、ロシア語という参入障壁があり、政府が内需の拡大に取り組んでいる。一部の分野では外資企業の誘致が促進されていますが、基本的にはロシア企業の利益を守りに来るでしょう。この状況、個人的には、ソニーやトヨタを育てた高度経済成長期に似ていると思っています。(当時のことは知りませんが笑)
ただ当時と比べ、決定的な違いはインターネットの存在です。市場は既にグローバルなので、内需の拡大ばかりに気を配ると、日本のようにガラパゴス状態になってしまいます。とはいえ、優秀なロシア人たちはアメリカの大学・大学院を卒業する傾向にあります(頭脳流出)。したがって、政府としても資源で外貨を獲得しつつ、ベンチャー支援を通じて、国内産業を育て、頭脳流出を防ぐことを最重要課題と理解しているのでしょう。