激闘、ロシアのスマホ決済
ロシアには、1億4千万人の人口に対して、2億5千枚のクレジットカードが流通しています。もちろん、所得格差が激しいので、広く普及しているとはいえません。
ただ、それでも尚、スマホ決済 は注目されていて、その中でも、マーケットリーダーと、それを追随するスタートアップの戦略(スタンスの違い)が面白いので紹介します。
2can
2011年11月に Nikolay Zhmurenko らによって創業された、ロシアにおけるスマホ決済のパイオニアです。CEOの Zhmurenko は15年近くテレコム業界におり、大手企業でのファイナンスマネジャーとしての経験があります。その他メンバーも様々な分野で10年以上の実務経験があります。
実際にサービスを開始したのは2012年9月で、同年12月には Almaz Capital *1という有名なVCなどから2.3億円のシード投資を受けています。ちなみに、スコルコボの入居企業でもあります。
市場の反応
2can は2.75%という破格の手数料を設定し、今ではMTCという国内最大手ネットワークプロバイダーが運営するMTC Bank と提携しています。この記事によると、2013年6月時点、ロシア国内のスマホ決済の50%以上の取引は2can経由とされています。
追記)2014年3月には 5億円の増資を発表しました。この記事によると、この半年間で取引額は500倍、トランザクションは200倍になったそうです。
このように行政や大手を味方に付けて、あらゆるランキングでAAA(最高評価)を受けている企業です。そんな2canに挑むのがLifePayです。
LifePay
2012年6月に創業し、3ヶ月後にはシードマネーとして2.6億を調達し、同年12月にサービスを開始しました。驚くことに、手数料は2.7%と2canよりもさらに安く、ウェブサイトも2canより遥かに充実しています。
1日の支払上限は5万円に設定されており、飲食店や美容院での普及を狙っています。これら分野の事業主を悩ますキャッシュフローへの配慮から、Squareと同じように翌日入金を原則としています。また、8ヶ月で4400店舗への導入を果たしています。
追記)現在、導入店舗は5000店以上、取引額は3億円以上、とのこと。
LifePayの可能性
最も注目すべきところは、創業者 Vyacheslav Semenchuk 本人です。サンフランシスコに拠点を置く27歳の起業家で、LifePay だけでなく、my-appps.com*2というサービスの運営にも尽力しています。
先程の記事にて、以下のようなコメントを残しています。
私は2canのCEO Zhmurenko と会って、自社の数字を開示しました。すると「こんな成長は信じられない」との反応がありました。単に、2canよりも5倍高い数値をKPIとして設けていただけなんですが...。
ハッタリかもしれませんが、文章を読む限り、さらりと言った気がします。(僕の解釈)
CEOの生い立ち
フォーブスのインタビューによると、Vyacheslav Semenchuk がビジネスをはじめたのは14歳の頃です。友達のためにデザインオフィスを立ち上げ、これが思いのほか評判よかったそうです。その後、ブログサービスを立ち上げ、広いオフィスや美人秘書を雇ったりして、ビジネスは失敗。さらに数年後、同じ過ちは繰り返さないと心に決め、投資家とスタートアップを繋ぐサービスを開発。同氏は、このサービスの開発を通じて、たくさんの投資家とのネットワークを築きました。
そして、現在は「市場を分析し、ニッチを早期に狙う」を心情とし、モバイルに注目しています。ウェブからモバイルへの移行は必然で、小規模の事業主にとってお客様とのファーストタッチはモバイル上が主流になると予測し、それを体現しています。
感想
今後の逆転劇!が起こるのかは僕にはわかりませんが、このようにロシアでもバイタリティ溢れる若い世代が活躍しはじめているのは、まぎれもない事実です!とはいえ、市場が追いつくまで、あと3年は要する気がします。
追記)この記事を書いたときは、LifePayが優勢だったのですが、最近は2canが巻き返しているように見えます。いずれにせよ、この2社の競争によって市場が成長していて、これこそ資本主義のあるべき姿でしょう。