IT大国ロシア

ロシアのITベンチャー、ロシアの大学生、ロシアのあれこれ、日本ではアクセスしにくい情報やニュースを発信します。

ロシアのモバイル事情&オンラインゲーム市場

 


ロシアで統計データを探すのはとても大変です。ロシア人に頼んでもなかなか見つかりません。政府が発行するレポートはほぼなく、無料の範囲であれば、コンサルティング会社や業界リーディングカンパニーのレポートに頼るしかないそうです。


ネット人口
ロシアのインターネット人口は、2013年に7000万人を越えたくらいで、2016年には9000万を突破すると推測されています。その内、約80(5500万人)が毎日アクセスしています。ちなみに2013年のスマホ普及率は約3540%のため、2000万人は越えています。(2500万人くらい)


スマホタブレット販売台数

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各社シェア

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出典:Ведомости

デベロッパー社数

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モバイルアプリ市場 (単位はM$)

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アプリダウンロード数

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オンラインゲーム

ロシアのオンラインゲーム市場は2013年に1000億円を突破しました。2011年以降、MMOカジュアルゲームソーシャルゲームの比率はほとんど変わらないまま、規模だけが伸びています(ソーシャルゲームが微増)。オンラインゲーム市場は、2015年までに1500億円を越えると予想されています。

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一般社団法人日本オンラインゲーム協会(
JOGA)によると、2012年の日本国内のオンラインゲーム市場は7056億円です。(PCを中心とするオンラインゲーム市場が1,420億円、フィーチャーフォンを中心とするソーシャルゲーム市場が4,351億円、スマートフォンゲーム市場が1,285億円)

とはいえ、まだまだゲーム課金が浸透しておらず、マネタイズに苦しむ企業が多いようです。Game Insight とSocial Quantum Online はとてもうまくいっています。ロシアのオンラインゲーム業界の有名企業 5社をご紹介します。(50音順)

Alawar
1999年に創業ノボシビルスク400人の社員。37言語に対応し、300ものタイトルを配信。2012年には、Game Developers Conference で「ロシアで最も優れたゲームパプリッシャー」として表彰。2012年の売上は30億円。150万ダウンロード/日。【Farm Frenzy】

Game Insight
Astrum Online Entertainment の社員が2010年に創業。モスクワとカリフォルニアに本社を置き、世界中に900人の社員。40本のタイトルを配信し、25千万ユーザーを抱える。2013年の売上は110億円。【Tank Domination, Dragon Eternity】

Mail.Ru Games (旧称:Astrum Online Entertainment )
2007年にオンラインゲームを提供していた4社が合併して、Astrum Online Entertainment を設立。合併により、国内45%のシェアを獲得したが、さらなる拡大を目指して2009年に Mail.ruの傘下へ。現在70のタイトルを配信。

Social Quantum Online
2010年創業。5000万人のユーザー登録している(デイリーユーザーは500万人)。その中でも、Farmers territory は2250万、Megapolice は2000万、New Lands は1750万ダウンロードを突破している*1。韓国でも人気を誇る【Farmers territory, Megapolice】

Zeptolab
2009年に創業、累計4億ダウンロードを達成したCut the rope というネイティブアプリを提供。他にも、オリジナルキャラクターのグッズ販売など、アングリーバードのロシア版というイメージ。【Cut the rope 】

*1:2014/03/01のパズドラが2500万ダウンロード

ヤバいのは WhatsApp だけじゃない!Telegram の猛進


Facebook が WhatsApp を1兆9千億円で買収したことが大ニュースになりました。それに引き続き、LINE がスタンプのオープン化を発表するなど、メッセンジャーアプリの業界図が変わろうとしている最中です。(楽天Viber 買収も!)

そこで、以前にもブログで紹介した、ロシア発のメッセンジャーアプリ、Telegramの最新情報をお伝えします!Telegramについては以下をご覧ください。

ロシア最大のSNS、VKの創業者が開発!収益化しないメッセンジャーアプリ! - IT大国ロシア

最新といいながら、もう1週間前になるのですが、2月21日、ドイツ・オランダ・スペイン・メキシコ・チリ などの国で、WhatsAppを抜き、最もダウンロードされるメッセンジャーになり、1日で50万ダウンロードを集めました。


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これに留まる事なく、翌日22日にも新規ユーザーが80万人増加しました。


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1秒毎に100人が新規登録をしているそうです。


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23日には、1日で180万人が登録したそうです。


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24日には、わずか1日で495万人が登録したそうです。


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(bad news とは2時間サーバーが落ちたこと...)


2月のはじめ頃は、アラブ諸国でコミュニケーションアプリ1位を総なめ状態でしたが、その座は WhatsApp に奪われてしまったようです(現在は2〜5位)。ちなみに、ロシア語版はまだリリースしていないため、ロシア国内では、まだ19位のようです。

伸びているような、でもイマイチ実感のわかない Telegram ですが、LINE と WhatsApp の変遷をベンチマークにすると、結構イイ感じです。


WhatsApp
2009年5月にサービスを開始。2013年4月(3年11ヶ月)に月間アクティブユーザーが 2億人、8月(4年3ヶ月)には 3億人、12月(4年7ヶ月)に 4億人を超えました。創業者はウクライナ出身*1

LINE
2011年6月にサービスを開始。2012年7月(1年1ヶ月)に 5000万ユーザーを突破、2013年1月(1年7ヶ月)に 1億ユーザー、7月(2年1ヶ月)に 2億ユーザー、11月(2年5カ月)に3億ユーザーを突破しました。WhatsAppと同様に、1億人を越えてから、約4カ月に1億人ずつのペースで増えています。

Telegram
2013年8月にサービスを開始。Ведомости によると、2014年2月(6ヶ月)に 1500万ダウンロードを越えたくらいです。このペースでいけば、今年中に 1億ユーザー突破は手堅いですね。創業者はロシア出身。

ちなみに、Viber創業者もロシア出身*2です。メッセンジャーアプリにおいて、ロシア人が大活躍ですね!


出典:цукерберг позвонит, Ведомости

*1:16歳のときにカリフォルニアへ移住。ソ連時代に生まれているので、ロシア と表記

*2:16歳のときにイスラエルへ移住

【視察】 ノボシビルスクのスタートアップ事情



ノボシビルスクは、日本ではあまり知られていませんが、人口150万人を擁するロシアで3番目に大きい都市です。ソ連時代から学術都市(アカデムゴロドク)として栄えた地域で、優秀な科学者やエンジニアが多く住んでいます。ちなみに、真冬には-40度まで下がるそうです(先週は-25度でした)。
 

アカデムパーク

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ノボシビルスクの駅からバスで1時間のところに、アカデムパーク があります(2010年建設)。ここでは、学術研究に基づいたビジネス、ベンチャー企業を創出しようと、政府系の研究機関(ロシア科学アカデミー)、大学(ノボシビルスク大学など)、インキュベーションセンターが徒歩圏に集まり、シベリア発のベンチャーエコシステムを創ろうとしています。


スタートアップツアー
Russian Startup Tour という政府系ファンドが主催するイベントがあります。ロシアの全27都市で3か月かけて、ピッチコンテストをやる、というスタートアップの啓蒙活動です。

このイベントで、15
件のピッチを聞きましたが、ほとんどのプレゼンが、バイオ、ナノ、エネルギーに関するプレゼンで、事業内容については、前回と同様、よくわかりませんでした。ただ、特徴的だったのが、圧倒的にビジネスサイドが不足し「シード投資12億円とマーケターを募集しています」というプレゼンが多かったです。

技術的な課題についての言及はありませんでした。もちろん、研究がうまくいったから、ビジネス化しよう!という思考なので、技術面に不安があれば、研究段階のはずです。なので、プレゼンも「テクノロジー」について熱弁することが多く、市場やファイナンスについての説明は、大学生のビジネスコンテストレベルでした...。


優秀なプログラマー
で、肝心のITに関して、優秀なプログラマーがいることも事実です。特筆すべきは人件費で、モスクワで、プログラマーを雇う場合、1~3年目:18万円4~7年目:24万円8~10年目:30万円、くらいだそうです。一方で、ノボシビルスクでは、1~3年目:9万円4~7年目:12万円8~10年目:21万円、とだいたい半分の給料で雇うことができます。したがって、海外の大企業が、オフショア開発 or R&Dセンターを目的に彼らを雇うケースが多いです。

とはいえ、
ノボシビルスクを代表する企業はいずれも IT企業です。
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1つめは、
Alawar Entertainment というカジュアルゲームを開発している会社です。1999年に創業、37言語に対応し、Farm Frenzy などをはじめ 300本のタイトルを出しています。2012年には、Game Developers Conference で「ロシアで最も優れたパプリッシャー」として表彰されています。ちなみに、Forbes.ru によると2012年の売上が30億円だったようです。

もう1つは、以前も紹介した Appercodeです。詳しくは こちら をご覧ください。


感想
ノボシビルスクのスタートアップ環境は ヒトもカネもない状況でした。

基本的に研究ベース(=ハイテクスタートアップ)なので、創業メンバーの平均年齢も高く、3040代が中心になります。また、サイエンティスト(or エンジニア)によって構成されるチームのため、ビジネス経験もなく、海外展開などスケールさせる意欲を感じませんでした。したがって、VCが入るメリットが薄く、結果、スタートアップは政府からの助成金に頼ることになります。ゆえに、ビジネスノウハウも入ってこない・蓄積されない、という感じです。また、
多くがIT以外であるため、多産多死型でもありません。

実際、審査員はほとんどが
スコルコボの方々で、唯一VCとしては、シベリアを中心に投資を行うキャピタリスト1名だけでした。(審査員のスコアシートをチラ見したのですが、スコルコボ関係者は軒並み 低い点数 を付けていました...)

だからこそインキュベーションセンターが設立されたわけで、まだ歴史が浅く「時間が必要だ」という見方もありますが、ITスタートアップに関して言えば、モスクワやカザンの方がよっぽど期待できる、という印象を受けました。もちろん、ハイテクスタートアップ(バイオ、ナノ、エネルギー)であれば、ノボシビルスクはとても重要な地域だといえるでしょう。

 

競合も10億円以上を調達!激戦、ロシアのホテル・航空券予約サイト


ロシアの都市をいくつか訪れるにあたり思ったのですが、ロシアのホテル・航空券の予約サイトは、中規模のスタートアップが乱立している状態です。

ロシアのインターネットユーザーは、2012年で6000万人、2016年には9000万人になるとされています。国際トラベルマーケット調査会社、PhoCusWright によると、2013年のロシアにおける旅行市場は58千万円と推定されています。その内、約16(1兆円)はオンライン予約によるもので、この比率は 欧州の50%台、BRICsの2030%という数字に比べ低いです。しかし、このオンライン旅行市場は、年率50%で成長しています。

なので、数十億円の資金調達をしているメジャーなサイトを紹介します。


Aviasales.ru
iTechCapital*1から10億円。
既に13
か国に進出し、400万人/月のユニークビジターを抱え、50万件/日の検索が行われています(27%がスマホタブレットから)同社は、ロシア初のメタサーチによって、チケットの最安値を表示しています。f:id:nagahamakenta:20140224141707j:plain



Travel.ru
(旧名:Oktogo.ru)は VTB Capitalなどから30億円。 
Oktogo.ru
はロシア最大手のホテル予約サイトで、国内4000件、世界で25万件のホテル情報を保有し、国内だけで100万人/月 がサイトを訪問していました。20139月にTravel.ru 2億円で売却し、統合されてから、同社の利益は、2011年は10億円、2012年は30億円、2013年にはその3倍が見込まれています(201312月時点)f:id:nagahamakenta:20140224141057j:plain


Ostrovok.ru
はロシア最大のエンジェル、ユーリミルナーなどから40億円。
Yandex のエンジニア、Booking.comのロシア代表らが創業したホテル予約サイト。ロシア国内に3400件、世界中で135,000件のホテル情報を保有。予約手数料を取らない分、安値での予約が可能。f:id:nagahamakenta:20140224142541j:plain



Onetwotrip.com
Atomicoなどから25億円。
2011年に創業した航空券予約サイトですが、20138月にホテル価格の比較サイトDealAngel 10億円で買収しました。2012年には売上300億円に上り、2014年あたりに欧州でのIPOを狙っている"らしい"です。f:id:nagahamakenta:20140224140902j:plain


 
チケット予約は窓口で...
ロシアの国内移動は鉄道が主ですが、チケットの予約は一苦労です。クレジットカードさえあれば、普通にネット予約ができるのに、多くの方が窓口で現金購入です。(僕はロシアにきて1ヶ月目で財布を盗まれたので、現在クレジットカードは持っていませんw)

さらに大変なのが、窓口に着いてから、

210日発、モスクワ行きは何時発の便がありますか?」
7時だけです」
「あー、じゃあ29日の夜はありますか?」みたいな会話を窓口でします。

その後、身分証明書の情報を手入力するため、旅券発行に1人あたり5~10分くらいかかります。なので、窓口に並ぶとチケット購入で1時間はざらにかかります。

スーツを着て「ビジネスマン」と一目でわかる人たちは、既にEチケットの習慣が身についているようで、窓口に列をなすのは、出稼ぎ労働者、中流階級の若者、お年寄りです。きっと長年沁みついた「チケットは窓口で」という感覚があるのでしょう。

旅行チケットだけでなく、劇場(オペラやスポーツ)のチケット販売大手 Ticketland iTechCapital から10億円を調達し、Eチケットのシェア獲得に取り組んでいますが、苦戦しているようです。(Eチケットはチケット販売の5%にすぎません)


感想
で、
問題は、中流層が増えているとはいえ、Rusbase によると、月収20万円の家庭は1年間に平均1回の旅行をするとされています。市場は伸びているといえど、まだ市場は小さく、パイの取り合いが極めて激しい状況です*2 今後、統合が進むのでしょうが、投資額は大きいのに、M&Aのディールはどれも少額ですね。

*1:iTechCapital
メディア、テレコミュニケーションに投資する、とホームページには書いてあるが、ポートフォリオを見る限り、旅行、広告に投資。1社あたり10億円まで。
Ticketland, aviasales.ru, SEOpult, Garpun, icontext など

*2:ロシアには1週間~2週間のまとまった休みを取る習慣があるので、旅行といえど、季節ものではないと思います

【視察】モスクワ物理工科大学 バイオインキュベータ


MIPT (Московский Физико-Технический Институт госдарственный университет)

モスクワ物理工科大学、ロシアのMITと称される国立大学です。僕が知る限り、急成長を遂げているスタートアップの起業家は、ここの卒業生(物理学、数学、コンピュータサイエンス専攻)であることが多いです。

ホームページを見ていると、大学内にバイオインキュベータが存在することを知り、興味本位で連絡したところ、雑談含め 5時間も施設を案内していただけました!


モスクワ物理工科大学

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この大学では学士と修士合わせて5000人の学生が学び、多くのドクターが研究をしています。アクセスはイマイチで、モスクワ都心部から電車で30分、バスに乗り換え30分です。このインキュベータの役割は、ベンチャー支援を通じて、大学研究*1を社会に送り出すため、産業界との橋渡しをしています。また、政府計画 (The Development of Pharmaceutical and Medical Industry of the Russian Federation until 2020 and beyond) モスクワにバイオクラスターを設ける一翼を担っています。


インキュベーションセンター
2012年5月に設立されてから、すでに15の企業が誕生し、

インフルエンザや生活習慣病HIV/AIDSの治療薬
ガン細胞を分析し、副作用のもっとも少ない薬の投薬を可能にするシステム
人工授精により高確率で生じる障害を早期発見(その後は中絶?早期治療?)
抗体の似た細胞を移植することで、回復を早める何か(笑) など

当インキュベータは、製薬と医療器械の開発に重点を置いています【公式HP

あくまでも大学であるため、教育と商業化のバランスが難しいということ。研究費は主に助成金(数百万円)頼みで、一概には言えませんが、研究段階では数千万円~1億円の予算が必要で、動物実験など商業化を目前に控えた段階では、2030億円が必要とのことです。

ちなみに、インキュベーションセンターのディレクターは、元コンサルタントで、日本語は話せませんが、日本に来たこともある、日本好きな方で、インキュベーションセンターなのに、兜や刀が飾ってありました!


リーダー育成プログラム
他にも、研究者の卵を「単なる研究者」ではなく「リーダー」「プロジェクトマネージャー」として育てる有料プログラムも提供しています。チームビルディングやマーケティング、知財戦略を中心にレクチャーし、その後、実際にプロジェクトを運用させます。35年の就業経験のある35歳以下が対象で、数学と英語、専門分野の知識が問われるそうです。(数学が必須、というのがさすが…)


大学ファンド

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さらに、興味深いことに、Phystech Ventures という30億円規模のファンドを最近立ち上げました。Fintech, Edutech, HealthcareIT, 3D-printing, Efficient energy use, Technologies in oil & gas の分野に1件あたり5000万円程度のシード投資を行っていくそうです。RunaCapital AlmazCapital のキャピタリストもコミットしており、いわゆるビジネスサイドはキャピタリストが全面支援するそうです。


感想
政府や大学は2020年を目途に教育プログラムや都市計画を推進しています。教育に時間とお金を費やすのはとても正しいことだと思いますし、夢や希望があってワクワクします。とはいえ、僕がいうのも大変おこがましいですが(日本と比べると)「やっとこの程度か」という印象を受けます。

確かに、今までなかったこと・ものをはじめる、というのは大きな変化をもたらすと思います。ただ、トップダウンだけではなく、現場レベル(学生・若者)でも自発的な動きが生まれないと、物足りない気がします。

もっとストレートにいうと、ロシアの20代前半は受身です。国柄?をくみ取ると、ロシアで若者といえば18歳~35歳を差し、修士課程への進学率も比較的高いことから、20代前半は教えてもらうもの、という雰囲気が根付いています。

言い換えれば、学術的な教育水準はとても高いことを意味します。だからこそ、先に述べたリーダー育成プログラムやインキュベータが機能すれば、一気に回りはじめると思っています。

*1:埋没する研究が多いことから、"象牙の塔"と揶揄される

注目されているロシアのBtoB企業5選!


今日は、メモ書き程度ですが、企業向けのサービスを提供している企業を紹介します。


1. Acumatica

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会計管理、労働管理、CRM、など経営資源を有効活用(ERP)するための様々なパッケージソフトをSaaSもしくはライセンスで提供している。条件によって異なるが、会計管理の月額費用は20万円で、他の管理ソフトは1つにつき月額13万円で追加することができる。Almaz CapitalRuna Capital を中心に16億円を調達。現在の代表 Yury Larichev は、マイクロソフトのロシア展開を担当した。


2. Zingaya

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企業のホームページからワンクリックでコールセンターに電話を掛けられるというサービス。Skypeのイメージ。企業の月額利用料は280ドル。現在は500社程度に導入されており、1200万人からの問い合わせがあった。導入はわずか15分。2010年にモスクワで創業、2011年に個人投資家から1.2億円を調達。


3. CentroBit Agora

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インターネット配信やEコマース構築を行うシステムインテグレータ。Eコマースの卸とクライアントの間に生じるルーチンワークを自動化するシステムを提供している。システムによるが、数十万円の費用で導入でき、ライセンスの場合は月額数万円。


4. Realtime Borad

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オンラインホワイトボード。会議やブレーンストーミングに使いやすいようにデザインされている。パワーポイントを操作する感覚。チーム利用の場合、1人あたり月額1000円で、音声通話が可能でデータは5GBまで。個人使用はフリーもしくは月額1000円のプロ、2パターンある。


5. Online Patent 

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特許や商標をオンラインで申請するサービス。わかりやすい説明付きの必要事項を埋めて提出すれば、申請を済ませてくれ、特許を取得できる。記入時に弁理士のサポートを受けるプランもあり、権利内容にもよるが、サービスの利用料は1万円前後 (これに加え、別途 申請費用が発生)。安い、早い、簡単、の3拍子が売りである。

【視察】 カザンのスタートアップ事情


Russian Startup Tour という政府系ファンドが主催するイベントがあります。ロシアの全27都市で3か月かけて、ピッチコンテストをやる、というスタートアップの啓蒙活動です。カザンに行ってきたので、スタートアップ事情をまとめてみます。

カザンは人口100万人を超え、タタール人が50%、ロシア人が45%、少数民族が5%という都市です。先日紹介した Innopolic University を建設中だったり、理系教育が盛んな街です。観光地としても有名です。タタール人は美人で、そうじゃない人を探す方が難しかったくらいです(笑


カザンのスタートアップ
ピッチコンテスト(15件くらい)と同時平行で、起業家向けのセミナーをやっていたので、行ったり来たりして網羅することはできませんでした。コンテストでは、バイオ、IT、ナノテク、1件ずつ表彰されたのですが、恥ずかしながら、バイオもナノテクも説明がわかりませんでした...。ホームページすら見当たりません。

バイオに関していえば、骨の成長を3~6倍早める(=骨折からの回復が3~6倍早まる)という企業があったので、それ以上に面白い発表だったんだと思います...

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IT部門で表彰されたのは、Road AR というカーナビアプリで、フロントガラスの前に設置すれば、カメラで道路標識を読み取り「駐車禁止!」「スピード違反!」などを警告してくれます。他にも、他ユーザーなどから集めた情報をもとに、渋滞を加味し、目的地への最適ルートを通知されます。


カザンのインキュベータ
イベントは IT-Park というインキュベーションセンターで開催されました。ここは、入居から1年で次のステージまで拡大できるようにサポートしています。(1年目は月額2万円ですが、2年目は月額10万円になります)。シェアオフィスには20社の枠があり、現在は15社が入居しています。

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ecwid という、既存のECサイトと連動してSNS内でECサイトを5分で開設できるサービスを支援しています。45言語に対応し、40万店舗が登録され、140万人の利用者を抱えており、FacebookのECアプリでは #2 です。Runa Capital からも1.5億円を調達。


カザンのベンチャーキャピタル
Pulsar Venture Capital というカリフォルニア(シリコンバレー)とカザンに拠点を置くファンドがあります。まだプレシードのスタートアップにも投資し、10tracks という音楽アプリの他に、パーキンソン病など神経病の早期発見キッド、小型バイオマス、などのバイオテックにも投資しています。

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10tracks は、PCから好きな音楽をクラウド上に保存しておき、モバイルアプリを開けば、どこでも音楽を聴ける、というサービスです。独自の認識アルゴリズムで、コピーが数秒で完了するのが特徴です。3GBまでは無料。


カザンの大学
以前 ブログ で紹介した、Innopolis University の状況を観に行こうとしました。

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しかしながら、電車はもちろん、バスすら通っておらず、この雪の丘を越えることはできず、遠くから様子を眺めるのが限界でした。(帰りはヒッチハイクで帰るほど)

ちなみに、SNSで1期生にコンタクトを取って、メールでやりとりをしているのですが、現在は提携先のカーネギーメロン大学に留学しており、カザン(ここ)で学ぶのは来年からとのことです。1期は若手社会人が中心で、工科大学院の色が強いこともあり、起業(ビジネス)!というよりは、GoogleAmazonで働きたい、という理由で入学した学生が多いそうです。


今月末は、人口第3位、エンジニア都市、ノボシビルスク(シベリア)に行きます!