IT大国ロシア

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ロシアといえばセキュリティ。ロシアのセキュリティ市場 



ACM国際大学対抗プログラミングコンテストという、5時間で約10問の問題を解くというコンテストがあります。現在はIBMがスポンサーということもあり、毎年2000大学8000組からの応募がある大規模なコンテストです。

この大会で、2000年以降、最多優勝回数 8回を誇る国こそロシアです(特にサンクトペテルブルクの大学)。ちなみに、日本は2013年に東京大学が3位を獲得し記録を更新しましたが、それまでは2000年の京都大学7位が最高でした。


日ロのセキュリティ市場
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ロシア連邦セキュリティ市場調査(露)、情報セキュリティ市場調査(日) より作成

IT分野において、ロシアの市場規模は日本の1/7~1/5倍くらいという印象なので、とりわけ、セキュリティ業界が著しく大きい、というわけではありません。しかし、その比率は注目に値し、ネットワーク脅威対策の市場は、わずかですが日本を上回ります。(日本540億円、ロシア570億円)

ちなみに、ロシア市場におけるセキュリティソフトのシェアは、40%が国産で、60%は外国産(アメリカ、イスラエル)です。

以下では、そんなセキュリティ業界の大手とスタートアップを3社ずつご紹介します。

Kaspersky (大)
1997年に創業、この分野では初めてヒューリスティックウイルス分析、言語テキスト分析の開発。圧倒的な検出率が高い。セキュリティの中でも、ウイルス対策ソフトに特化しており、この分野で世界No1を目指す、とする。ネットバンクにも対応。創業者、ユージン・カスペルスキーは高校生の頃に、モスクワ物理工科大学の課外授業(数学、物理学)を学ぶほど、数学に長けていた。

Elcomsoft (大)
1990年に創業され、パスワード回復ソフトをはじめ、ネットワークのセキュリティなどのソフト、10種類以上を提供している。同社のソフトは競合の50倍の速さを誇り、世界最速の復旧を実現する(特許取得済)。法人向けは200万円。(お手頃らしい)

Dr.Web (大)
ソ連軍のパイロットだったイーゴリダニロフが計算機科学者に転身し、独自の理論に基づき開発したアンチウイルスソフト。ロシア国防総省、政府機関、地方自治体などでも採用されるほどの実績を持つセキュリティベンダー。1992年にDr.Web としてスタートしたが、2003年に法人化。日本では2010年から販売している。

SkyDNS (ス)
コンテンツフィルタリングのクラウドサービス(SaaS)を提供している。個人、学校、法人、とプランが分かれているが、どのプランでも、値段は年間1000円。フィルタリングは54のカテゴリから手動で設定できる(or しなければならない)。ちなみに、無料版でもフィッシング、マルウェアトロイの木馬などをブロックすることができる。

SiteSecure (ス)
サイトの安全性チェックなどの基本プランは無料、ハッキングや決済情報の漏えいに備えるプランなら月額7500円。ECやSEOを扱う法人向けに「パートナー契約」があり、年間6万円。創業者は1989年生まれの若手で、19歳の頃に受注を辞め、専門の情報セキュリティにフォーカス。カスペルスキーに居た経験もあるメンターらを仲間に加え、SiteSecureをリリース。19ヶ月で黒字化。

Wallarm (ス)
Webアプリケーションの脆弱性から顧客を守るサービス、Nginxに導入されるWebアプリケーションファイアウォール(WAF)。アプリやユーザーの行動から機械学習(マシンラーニング)することで、新しい脆弱性が見つかっても自動で修正し、設定をしなおす必要はない。0-Dayアタック*1 にも対応できる。なお、wallarmに投資するRunaCapitalはNignxへも投資している。

  

*1:脆弱性が見つかったとしても、開発者が対応する前に、その脆弱性を悪用した攻撃