IT大国ロシア

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ロシアのハイテク・スタートアップ5選 ~スコルコボ編~



ロシア最大級のスタートアップイベント Startup Village に参加してきました。

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イベントは、10の会場で一斉にセッションが行われるという、カオス極まりない設計でしたが、各地区予選を勝ち抜いたスタートアップばかりだったので、全体のレベルはとても高かったです。デジタル分野を中心に約40社のピッチを聞けたので、その中でも面白かったスタートアップをご紹介します。


ТРИК 
エンジニアリングやプログラミングの知識がなくともロボットを組み立てること(造る)ができるキットの販売。簡単なラジコンから複雑なサイバネティクスシステムまで。個人ロボティクス向けのプラットフォーム。値段は用途によって、数万円~10数万円。


xTurion
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ルンバ型の防犯装置です。自ら障害物をよけ、バッテリーがなくなれば、自らコンセントを探し、部屋中を移動します。もちろん、リモートコントロールも可能です。360度カメラに加え、温度・湿度・騒音・大気の変化、などを察知し、変化があればメール通知で知らせます。自動学習により、使えば使うほどスムーズな動きが可能。(例:ペットを異物としてみなさなくなるetc…)


GeoCV
部屋など内装の3D画像を撮影できるカメラを販売します。カメラ自体は10万円、加えて1㎡あたり0.5ドルで、まずは不動産業者に対して販売を進めています。コンセプトはGoogleのTangoと同じですが、GeoCVはTangoと同じ価格帯で、よりハイクオリティの撮影を可能にします。同社は、2005年からサムスンと共同研究を実施し、特許を取得しています。


RoboCV

あらゆる車両に対し、自動操縦を可能にする制御システムの開発。現在は、フォークリフトなど倉庫用車両のみですが、2015年を目途に鉱山用車両や乗用車に展開させる予定です。フォークリフトにおいては、人や障害物をきちんと避けることはもちろん、自動でバーコードも読み取ります。そのため、どこからどこへ荷物を移動させたか、wifiを通じ、WMS(在庫管理システム)に送られるので、一括で管理・確認できます。


TTGlabs
グラフィックアクセラレータと異種(ヘテロ)HPCシステム上で、アプリケーションの最適化を促進するツールを提供しています。仕組みとして、自己学習の後、実行されているハードウェアプラットフォームや処理すべきデータに合わせて、自身を調整することで、その条件下で最高のパフォーマンスを発揮します。カメラのHDRオープンソースから、10倍~100倍のスピードで処理できるアルゴリズムなどを開発。


共通点
全体的な傾向として言えそうなことは以下の3点です。

1) 日本と比べて一番驚かされるのは、エンジニア中心のチーム構成で、起業家もVCも、Ph.D を有する人が多いことです。30代のエンジニアが、企業で5~10年働いた経験のある人と一緒に創業し、60~70歳の大学教授とVCがアドバイザーにつく、というケースを何件も見ました。

2) 資本政策がめちゃくちゃでした。審査員(VC)に対して「20%~50%のシェアで、2000万~1億円のシード投資を検討しています」なんてプレゼンも多くありました。

3) プレゼン資料はもちろん、ウェブサイトなども、海外ウケの悪いデザインな気はします。キリル文字仕様なのかもしれませんが、それでも、プロダクトデザインを軽視しがちな感じは滑稽なレベルです。ビジネスロシア語検定のテキストでも言及されていたほどです。(つまり認識はあるのか...?)


感想
今のロシアは、投資を受けやすいプチバブル状態で、VCも投資先を探すのに必死、という印象を受けました。ロシアでは、プレゼンターが審査員に声を掛けに行く(起業家がVCにネットワーキングする)ケースは稀でした。名刺を配ったりする人はいますが、基本的に、VCから起業家にアプローチする雰囲気があります。なので、審査員といえど、気に入ったスタートアップがあれば、次の案件を聞かずに(職務を放棄してw)、起業家の元へ話に行く、という光景もありました。