IT大国ロシア

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ロシアのEC市場では、Amazon にチャンスはない。


ロシアでもようやくECに火がつき始めています。前年比 31%の伸びを見せ、2013年のEC市場は約8000億円、2015年には1兆円を突破するとされています。

先月、モスクワから電車で20時間の ボルゴグラード大学 へ行ったとき、

学生「ネットで本注文したんだけど、2週間くらいかかるかなー」
僕「 へー、2日で届くんだ!」
学生「いやいや、2週間だってw」

という会話をしました。ロシアのインフラは最悪だ、と物流に課題を残すロシアですが、それは ロシア郵便 を使った場合です。最近は、モスクワを中心に、自社配送まで担ったECサイトが伸びています。

それでは、ECサイト TOP5 をご紹介します。ちなみに、企業名はロシア語読みです。


1. Юлмарт (ユルマート)

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サイト:Ulmart.ru
設立:2008年
社員数:6500人
売上高:1021億円

ピザ屋の電子機器バージョン。文字通り、電子機器が送られてくるのですが、

  1. 家でネット検索、宅配を待つ
  2. 家でネット検索、店舗へ取りに行く
  3. 店舗で検索、店舗で受け取る

3つの方法があるのが特徴です。この記事によると、どの方法でも現金支払が可能で、未だクレジットカードの保有率が低いロシアでは、これが Amazon に対する大きな強みになるとしています。一方、Amazon はフェデクスやDHLに並ぶ運送会社UPSと契約しているので、柔軟な対応はできないようです。

物流に関して、このインタビュー記事によると、在庫を自社の配送センターで抱えることで、発送準備にかかる時間を平均 7分に短縮し、ロシアといえど、1日〜2日の配送を可能にしたそうです。*1

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というわけで、実際にユルマートに行ってみました!

最寄駅からバスで10分、徒歩で20分のところで、平日の昼間に、50人くらいのお客さんが店舗でネットに向かい、スタッフは約 20人いました。接客サービスの質は日本と比べて遜色なく、冷やかしの僕も優しくしてもらいました。

電子機器を中心に 35,000点を扱っており、330万人/週 がサイトを訪れています。1000万枚のポイントカードを発行済みで、ポイント還元や割引広告などのマーケティングはヒットしているようです。たしかに電車広告をよくみかけます。

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2位以下は、もうちょっとスマートに、要点だけまとめていきます。


2. Ситилинк (シティリンク)

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サイト:Citilink.ru
設立:2008年
社員数:3000人
売上高:868億円

電子機器に特化したECサイト。30万人/日がサイトを訪問。 3600億円の売上があるコンピュータ機器を扱う Merlionの販売代理店です。自社を電子機器のディスカウントショップと位置づけています。


3. Wildberries
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サイト:Wildberries.ru
設立:2004年
社員数:4500人
売上高:530億円

ロシア版ZOZOTOWN創業者は、ドイツから最新の洋服をとりよせ、転売をしていた英語教師でした。一念発起して夫婦で創業したネットショップは拡大し、今では、ロシアのアパレルEC最大手にまで成長しました。1000ブランド、10万点を扱い、250万人のユーザーがいます。150の流通拠点を持ち、ロシア全国で送料無料、です。


4. Ozon (オゾン)

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サイト:Ozon.ru, Sapato.ru, Ozon.travel
設立:1998年
社員数:2270人
売上高:350億円

ロシア版 Amazon楽天も出資している 利用者数ロシアNo1 のサイトです。Amazonを意識した経営戦略を打ち出しています。詳しくは以下をご覧ください。

ロシア最大のECサイト OZON.ru - IT大国ロシア


5. Biglion

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サイト:Biglion.ru
設立:2010年
社員数:1500人
売上高:334億円

ロシア版グルーポン創業者はロシア最大のメディア РБК の元副局長。数年前から電化製品や家庭用品にも裾を広げ、5000件/日の注文があります。商品/サービスは、50%〜90%のディスカウントがされており、販売手数料が収益源です。こちらもロシア全国で送料無料、です。


感想
大型ECになると、送料無料自社配送 が必須のようですね。とはいえ、ITリテラシーが高いのは西側に偏っているので、西から東まで配送しているわけではなさそうです。あと、Yhaoo、楽天のような総合プラットフォームはまだないようで、特化型が目立ちます。大きくなったら業界の #1に売却するのでしょう、10位前後には小型のECが乱立しています。

ちなみに、Amazon はロシア市場において電子書籍に力を入れています。ロシアにおいて、外資企業がサプライチェーンを構築する難しさを物語っている気がします。


出典:Forbes.ru

*1:13都市 29カ所のターミナルがあって、120都市 250カ所に配送センターがあります。その内、モスクワに 9カ所のターミナルと 11の配送センター、ペテルブルクに 7カ所のターミナルと 39の配送センターがあります